『走れスティーナ』
□執筆:第一の亡霊
□編集:スティーナ

■原作:走れメロス
■著者:太宰治
※注意※
パロディネタ等に耐性の無い方、許容できない方の閲覧はオススメできません。

アークスでハンターやガンナーをしているスティーナは、妹の霧島のいんと二人暮らしでした。
まもなく結婚する妹のために、スティーナはフロアを越えテレポーターを越えて、数ブロックも離れたラグズの生活エリアへ衣装やごちそうなどを買い求めにやってきました。
それにもう一つ、この町に住んでいる親友にゅかに会うことも楽しみでした。
ラグズのショップエリアを歩いているうちに、辺りの様子が以前と変わっていることに気づきました。
エリアの人々はみんな早くに寝支度を始めているのです。
まだ夜も始まったばかりだというのに。
スティーナはその訳をエリアの人たちに尋ねました。

「王様は夜は早くに寝るものだと言って、次々と人を殺すのです。昨夜はまた騒いでいた傭兵とならず者が6人殺されました…」

スティーナはその話を聞くと、

「あきれた王ね、一体何を考えているのかしら…」

と、買ったものを背負ったまま、王の居るチームルームへ向かいました。
しかし、たちまち兵士たちに捕らえられてしまいました。
王の前に引き出されたスティーナは、王様の顔を見て、次に胸を見て、

「人前でそのような巨乳を見せつけるのはもっとも恥ずかしい罪よっ。王は貧乳の民草に絶望を与えるというの!?」

と怒って言いました。
貧乳の人々を苦しめていた国王第一の亡霊に立ち向かったスティーナは、王に呆れられ、

「駄目だなコイツは。何を考えてここに来たのか見当もつかん」

と言われ、処刑されることになってしまいました。
スティーナは、ふるさとに残した妹の結婚式のために、三日間だけ時間を延ばしてくれるように頼みました。

「とんでもない莫迦を言うやつだ。逃がした貧乳の変人が帰ってくるというのか」

「私は約束を守るわ。そんなに私が信じられないのなら、この町に住むにゅかという私の無二の友人を人質に置いていきます。三日目の日暮れまでに私がここへ帰ってこなかったら、私の代わりににその友人を殺してください」

王はスティーナの身代わりに友人を捕らえておくことを条件に、彼女の願いを許しました。
城へ呼ばれたにゅかはスティーナと再会し、すべての事情を聞くと黙ってうなずきました。
スティーナはその夜、一睡もしないで妹の待つ村へ走り続け、翌日到着しました。
そうしてその日のうちに結婚式の準備を済ませると、疲れ果てたスティーナは深い眠りに就きました。
目が覚めたのは夜でした。
スティーナは花婿である霜月名夜を夜明けまで説得して、その日の早朝のうちに妹の結婚式を挙げさせました。

三日目の朝スティーナは城へ戻るために走り出しました。
しかし、城まで半分という辺りで前方の川が昨夜の大雨で氾濫していたり、ダーカーの群れに襲われたりしました。
約束の時間は刻々と迫ってきます。
どうにかくぐり抜けたスティーナですが、さすがに疲れ果ててしまいました。
午後の太陽がまともに照りつけて、スティーナは何度もめまいを感じ、気を取り直しては2,3歩、歩きましたが、ついにがくりと倒れ込んでしまいました。
もう立ち上がることさえできませんでした。
ふと、疲れ切って弱気になったスティーナの耳に、水の流れる音が聞こえてきました。
スティーナはよろよろと起きあがって、岩の裂け目からわき出している清水を手ですくって飲みました。
疲れの回復とともにわずかな希望も生まれました。
既に太陽は西に傾いています。
スティーナは再びランチャーに跨ったレンジャーのような速さで走り出しました。
友を死なせるわけにはいかないという思いで、ただただ走り続けました。
最後のPPとモノメイトを振り絞って走り続けました。

地平線にゆらゆらと太陽が沈みかけたとき、スティーナは広場へと駆け込みました。
大勢の群数の前で今まさに、友情の証に命まで投げ出した友人の処刑が始まるところでした。

「処刑されるのは私よ。スティーナはここにいるわ」

スティーナは群衆の中からそう叫ぶと、十字架にはりつけられているにゅかに走り寄って、両足にしがみつきました。
群衆はこれを見てどよめきました。
人々は口々に、

「あっぱれ、許してやれ」

とわめきました。
にゅかの縄がほどかれたのです。
スティーナは目に涙を浮かべて言いました。

「私を力いっぱい殴ってちょうだい。私は途中でたった一度、貴女が殺されても仕方がないと思ったことがあったの」

にゅかはすべてを察して、スティーナを殴ってから、優しくスティーナに言いました。

「今度は私を殴って。私はこの三日間でたった一度だけ貴女を疑った」

二人は抱き合って声を上げて泣きました。
この様子を群衆の背後から静かに見ていた王は、二人に近づき、言いました。

「なるほど、確かにお前は約束を守った。では、王である私とお前との約束も果たそうではないか」

そうしてスティーナは処刑台に立たされ、その首を落とされたのであった。



◇◆◇◆◇◆



「……って違うでしょ! 何なのよこの脚本!」

ダンッ、と何かを叩きつける音と共にチームマスターであるスティーナの大声が響き渡る。
脚本を読んでいた他の面々は、顔を上げてスティーナに目線を向けた。

「モグモグ……んぐっ、そうですか? 確かにもう少し描写が欲しい脚本ですがー」

茶菓子を食べながら、最初に口を開いたのは霧島のいん。

「一応は粗筋だからな。ここから肉付けしていってカタチにしていく」

続いて、コーヒーを啜りながら答える亡霊。

「それは良いんだけど……描写薄いな、俺」

脚本を読み返しながら、苦い顔でぼやく名夜。

「それはそれとして、これって何に分類されるお話?」

首を傾げながら聞くにゅか。

「ってあなた達は別に死なないから良いじゃない! 問題はわたしの扱いについてよ!」

そう言ってスティーナは凄い形相で亡霊に睨みかかった。
当の亡霊は常と変わらぬ涼しげな表情をしていた。

「いつもと変わらん扱いではないか」

「たしかにそうだけど! でもこれって普通王様が感動して許してくれるって展開が普通でしょ?!」

「莫迦も休み休み言え。国王が一度決定した事を何度も変えては国が傾く。ただ王は約束を守っただけだ」

「(正論過ぎて言い返せない…!)」

フーフーと肩で息をしながら話すスティーナ。
小柄である為かイマイチ迫力に欠けるのが難点だった。
近くに座っていたにゅかが水を渡すと一気に飲み干し、何とか息を整える事が出来た。

「スティーナは配役の変更を申し立てるわ」

「なるほど。つまり私にプラン・スティーナではなくプラン・霜月名夜で書けと言うのだな」

「え、俺?!」

いきなり名前が出てきて驚く名夜。
そしてスティーナは何かに感付いたのか微妙な顔をする。

「……ねぇ、その場合の友人役って、誰がやるの?」

「まさか……アレじゃないっすよね?」

二人に聞かれ、鷹揚に頷き亡霊はにこやかに告げた。

「ああ。───無論、捕獲してきたダーク・ラグネを使う」

固まる二人。
笑顔を崩さない亡霊。
部屋に響くもっきゅもっきゅと菓子を食べる音。

数秒の沈黙の後……、

「「いやぁぁぁぁぁぁぁああ!!」」

二人の絶叫が周辺宙域に響いた。

「あ、お菓子のあたりが出ましたー」